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離婚した妻子に残した父の想い

Hさんより、三郷市の遺品整理の依頼があったのは春の引越しシーズンが過ぎた4月中旬頃であった。2DK築30年近くになりアパート1階の荷物を全て撤去したいとの事であった。通常このようなケースではご遺族が故人の貴重品等の確認を全て済ませた後、不要な品物を処分してほしいとの場合が多いが、今回は貴重品等の確認は一切不要との事であった。ご依頼された母と娘さんは、当初より非常に事務的に話をされてきた。今月中に全ての遺品を処分して、一日でも早く不動産屋との精算を行いたいとの事。

事情を確認したとこと、お亡くなりになられた男性は、ご依頼された母娘とは12年前に離婚をされ、現在母娘は、再婚をし再婚相手の父と娘さん3人にて暮らしているとの事だが、以前12年前まではアパートにて家族3人で暮らしていた為、アパートに永く住んでいる住民とは顔なじみであり故人の遺品よりも久々に逢うご近所の方に対しての昔話に話が進んでいた。

アパート内の状況はとにかく缶ビールと日本酒の空瓶が大量に放置されていた。風呂場を確認したがしばらくはまったく使っていない形跡でもあった。

おおよそ処理としては2トントラック2台分近くあり、アルコールのビンが生活必需品よりも多い。当日は母親がパートの為、娘さんが会社を1日休み部屋の鍵を朝開けに来てくれた。途中10時と昼すぎにアパートに顔をだされたが 遺品に関しては残すものはありませんのでゴミとして取り扱いをしてくださいと穏やかに伝えられた。

部屋の遺品処理作業は、貴重品や残される遺品がないと分かった場合には、大量に放置されたものから初め、比較的収納がよくされているところは最後に手をつけるケースが多い。居間のテレビのところは、非常にすっきりされており昨日まで故人が使われていた感じがした。作業がほぼ終わりかけようとしていたときに、娘さんが来られた。あと居間の一部にて30分位で終了いたしますとお伝えした。

居間のテレビの後ろにカレンダーが掛けられていた。その当時の10年以上前のカレンダーであった記憶がある。カレンダーを撤去したところ、後ろから娘さんの小学校2年生の時に書かれた書道の紙が掛け軸状にされてあり掛け軸の左下には、毎日の日付が書き込まれており搬出当日の8日前までの日付が書き込まれていた。さらに居間のテレビ台の中からは娘さんが小学校時代に使っていたと思われるランドセルが、20センチのミニサイズに加工を施してあり、出来具合から専門業者に作成を依頼したものと判断が出来た。念のため娘さんにご遺品をどうされますかと話したところ、それまで極めて遺品に対して事務的な会話をされていた娘さんの顔がこわばり、涙ぐんできた。

事情を確認すると、10日前にアパートで亡くなったそうだが正確な死亡日時は分からない。玄関の扉が開いたまま、玄関先で亡くなっていたところをご近所の方が警察を呼んだとの事であった。また父は生前お酒さえ飲まなければ普段はおとなしい人であったが、アルコールが入ると外でのトラブル、家庭内の暴力が多くずいぶんとこのアパートの方にも迷惑をかけ幼いころの思い出は父が母に対しての光景が酷く記憶にやきついており、現在の母親の再婚相手である父は、非常に穏やかな人であり今の暮らしに大変満足しているとの事であった。

娘さんはアパートの鍵を掛けた後、ご近所に挨拶まわりをされ1点の掛け軸と、ミニチュアに施されたランドセルを大切そうに胸にかかえられ、帰路の駅に向われた。
私は、その後ろ姿を、いまだに忘れられない。